文澳は澎湖に古くからある集落の一つです。かつては暗澳と呼ばれ、行政の中心地でした。康熙23年（1684年）に澎湖が清朝の版図に組み込まれると、古いしきたりに従い、暗澳に巡検司が設置されました。40年以上の時を経て、雍正5年（1727年）に巡検司が廃止されると、その翌年、澎湖海防糧捕庁が旧署に設置されました。
 
文澳城隍廟は澎湖において早くに建立された城隍廟で、文澳旧集落の中心に位置していました。そのため、乾隆の時代に澎湖通判を務めた胡建衛は『澎湖紀略』の中で、「澎湖文澳は庁署の東にあり、狭いため、敬意を表するには不十分であるが、実のところは土地に制限を設けられている」と述べています。これは、文澳城隍が登場する最も古い文献となっています。
もう一つの説は、雍正8年（1730年）に建立されたというものです。これは、「媽宮城隍廟残碑」の内容に基づいて推定したもので、残碑には「雍正八年、澎湖始庥、別駕口······」との文字があります。碑文には、雍正8年（1730年）に澎湖で城隍を祀り始めたとあり、文澳城隍廟の建立時期を推定することも可能です。しかし、確かな建立時期を考証することはできず、清代の康熙と雍正の両朝の間（1684- 1730）の可能性があります。その他にも、咸豊元年（1851年）には澎湖庁署の典吏であった呂純孝の主導により再建が行われました。
 
光緒15年（1889年）、清廷が澎湖庁署を媽宮城内の旧澎湖水師副将公署（現在の澎湖天后宮西側）に移転させた後、文澳城隍廟は文澳の地方廟となりました。日本統治時代、信者たちは廟の中で安全と健康を祈願する儀式や善書作りなどの活動を行っていました。台湾光復後、日本統治時代における管理の放棄により次第に荒れていった城隍廟を改修しようと、民国39年（1950年）に地元の名士が資金を集めました。
 
幅は変わりませんが、奥行きが増し、今日のような姿になりました。民国56年（1967年）、廟宇が粗末だとして改修のための資金が集められました。その4年後、澎湖廟宇の地元の色彩を保ちながら塗装が行われました。
データ出典：澎湖トラベル、 『2021年 文化資産ハンドブック』