1908年、日本海軍の練習艦である防護巡洋艦「松島」は、遠洋航海が終わり馬公港に停泊していた時、深夜に火薬庫爆発を起こし、多くの死傷者を出しました。この事故を追悼するため、当時の馬公市街地の東側（現在の民福路の西側、仁愛路の北側）にある海岸に松島記念公園を設けました。その後、松島記念館や皇族などの要人が休憩するための「貴賓館」が立て続けに建設されました。
 
1937年、開発要望に応えるため、松島記念公園の近くで埋め立てと港建設（現在の馬公第一漁港）が始まり、貴賓館は市街地北側にある鬼仔山で新しく開発された政治・経済・文化・教育地区一帯への移転が計画されました。昭和8年（1943年）に新しい貴賓館が竣工しましたが、太平洋戦争中であったため、日本統治時代の終了前に皇族などの要人が宿泊することはありませんでした。
 
1949年5月17日、すでに下野した蔣介石総統が澎湖の馬公を訪問し、貴賓館に宿泊しました。台湾省政府主席を務めていた陳誠氏が手配し、5月26日に馬公から高雄の岡山まで飛行機で向かいました。これ以降、貴賓館は「蔣公行館」となり、「第一賓館」に名前を変えました。1956年に総統専用の行館（宿泊施設）となり、西洋式の居住空間が増改築されました。同時に、第一賓館南側の地下に戦闘指揮所と隠し通路が設けられました。1958年に金門で八二三砲戦が発生すると、蔣介石総統は第一賓館に滞在し、戦闘指揮所を設置しました。蔣介石総統の数ある行館の中でも、戦略のための施設を備え、実際の戦争や任務に関与した唯一の行館です。その後、第一賓館は蒋経国氏、李登輝氏など歴代総統の澎湖における宿泊施設となりました。
 
1992年、澎湖防衛司令部司令官である宋川強中将は、第一賓館はすでに歴史的な使命を終えたとして、徐々に県民に開放していきました。2000年、軍は第一賓館の管理事務を県政府に移管しました。県政府は第一賓館周辺の庭園景観を整え、観音亭と調和させることで、西瀛勝境の景観となりました。

データ出典：第一賓館公式ウェブサイト、文化部「澎湖県媽宮旧市街区 歴史的現場の再構プロジェクト」、『媽宮（1604～1945）― 台湾の伝統的城鎮空間の近代化変遷に関する研究』（出典：国家図書館「台湾記憶」デジタルアーカイブ https://tm.ncl.edu.tw/）